Kazuo Umezz

ZOKU-SHINGO 小さなロボット シンゴ美術館

制作に4年の歳月を費やした『ZOKU-SHINGO 小さなロボット シンゴ美術館』は、1990年代の作品『14歳』以来、実に27年ぶりとなる新作です。

本作は1980年代に描かれた『わたしは真悟』の続編であると同時に、時空を超えたそのパラレル・ワールド(並行世界)でもあるのです。本作は時系列に沿って展開され、物語性を持つ点ではマンガと親和性はあるものの、101点から構成される各作品にはコマ割りがなく、1枚1枚が絵画作品として制作されています。
『わたしは真悟』から40年の時を超え、楳図かずおが生み出した新たなシンゴの世界をご覧ください。

exonemo

エキソニモ + わたしは真悟

インターネットの黎明期から一貫してテクノロジーについての作品を発表しているエキソニモは「わたしは真悟」をテーマに本インスタレーションを制作しました。大量のケーブルが山積する空間に設置された多数のモニターから「わたしは真悟」の作中場面が映し出され、会場の外に目を向けると、さとるとまりんが頂上から救助ヘリに飛び移った東京タワーが視界に入ります。東京タワーは2人が飛び移ったその瞬間に産業用ロボット「モンロー」に意識が芽生えるという、作中では最も象徴的なモチーフの一つです。「わたしは真悟」が発表されたのはインターネットも人工知能(A I)も実用化されていない1980年代でした。常に時代の先端技術に対峙してきたエキソニモのインスタレーションは、楳図かずおの持つ予見性に対するオマージュと言えるのかもしれません。

エキソニモ
Photo by Niko
エキソニモ
千房けん輔と赤岩やえにより、1996年よりインターネット上で活動開始。2000年以降は、表現の場を実空間へと拡張し、デジタルとアナログ、バーチャル空間と実空間など、ふたつの世界を自由に横断しながらその境界線にフォーカスしたプロジェクトを数多く手がけている。2015年よりニューヨークを拠点に活動。2020年に個展「UN-DEAD-LINK」(東京都写真美術館)開催。2021年、芸術選奨 美術部門 文部科学大臣新人賞受賞。

Yuma Tomiyasu

冨安由真 × ZOKU-SHINGO(素描)

このエリアでは、楳図かずおの「ZOKU SHINGO - 小さなロボット」が着彩される前のオリジナルの素描(鉛筆画)101点が展示されています。現実と虚構を往来するような作品で高く評価されている冨安由真は、素描101点が展示されている部屋全体の演出を手掛けるとともに、部屋の中央には小屋のような構造物を制作しました。その小屋には冨安が楳図の素描からインスピレーションを受けて選定した家具やオブジェなどが置かれ、素描のモノクロームな世界と、夢の中にいるような光と影の空間演出が入れ子状になって交互に浮かび上がります。ここでは「ZOKU SHINGO - 小さなロボット」の着彩と素描の世界観、そして楳図かずおと冨安由真という2人のアーティストによる表現世界というパラレルワールドを体験いただけます。

冨安由真
冨安由真
2005年に渡英し、ロンドン芸術大学Chelsea College of Artsにて学部と修士を学ぶ。帰国後、2017年に東京藝術大学にて博士号(美術)取得。現実と非現実の狭間をモチーフに大型のインスタレーション作品や絵画作品を数多く発表する。主な個展に「アペルト15 冨安由真 The Pale Horse」(金沢21世紀美術館、2021年)、「漂泊する幻影」(KAAT 神奈川芸術劇場、2021年)、「くりかえしみるゆめ Obsessed With Dreams」(資生堂ギャラリー、2018年)など。主な受賞歴に第21回岡本太郎現代芸術賞 特別賞受賞(2018年)など。

Tomoko Konoike

鴻池朋子 × 14歳

現代日本を代表する美術家の一人である鴻池朋子は、楳図かずおとの対話や、「14歳」をはじめとした楳図作品と向き合うことを通じ、同じ表現者/アーティストである楳図かずおの根底にある欲求やイメージを探りながら新作を制作しました。絵を描く者同士ゆえの発見や、物語を絵によって紡ぐ2人の共通性を通じて生まれたのは、「ZOKU SHINGO - 小さなロボット」の素描にリスペクトを込めたドローイング「かずお14歳」や虫の映像、楳図漫画に象徴的に登場する非常階段、「14歳」の終盤に登場する「ゴキンチの先生」の顔をオモリとして作られた空間を周期運動する振り子、そして「14歳」の作中に語られる言葉を左手で書き写した原稿用紙のドローイング、などで構成されるトータルインスタレーションの3作品です。これらの作品群によって浮かび上がるのは、「14歳」の作中における物語の断片ではなく、「14歳」を描いた楳図かずおという芸術家を通して、地球上の生き物としての芸術家像というものを探ろうとしているのかもしれません。

鴻池朋子
撮影:永禮 賢
鴻池朋子
玩具のデザインを経て、様々なメディアで現代の物語をトータルインスタレーションで表現。近年、地形や気候なども巻き込むサイトスペシフィックな展示や、触覚の可能性を探るプロジェクトを行い、芸術の根源的な問い直しを試みている。1960年秋田県生まれ。主な個展に「インタートラベラー 神話と遊ぶ人」(東京オペラシティアートギャラリー、霧島アートの森、2009年)、「獣の皮を被り 草の編み物」(ギャラリーヒュンダイ、韓国、2011年)、「根源的暴力」(神奈川県民ホール、2015年、 群馬県立近代美術館、新潟県立万代島美術館、2016年)、「ハンターギャザラー」(秋田県立美術館、2018年)「Fur Story」( Leeds Arts University、イギリス、2018年)、「ちゅうがえり」(アーティゾン美術館、2020年)。著書『どうぶつのことば 根源的暴力をこえて』(羽鳥書店)他多数。2017年芸術選奨文部科学大臣賞、2020年毎日芸術賞受賞。2021年夏、高松市美術館個展、瀬戸内国際芸術祭。

Curator

窪田 研二
窪田 研二
上野の森美術館、水戸芸術館現代美術センター学芸員を経て2006年よりインディペンデント・キュレーターとして活動。 2012年−2016年、筑波大学芸術系准教授として創造的復興プロジェクトに参加。 政治、経済といった社会システムにおいてアートが機能しうる可能性をアーティストや大学、企業などと協働し、様々な文化的フォーマットを用いて試みている。
 「X-color グラフィティ in Japan」(水戸芸術館現代美術センター、2005年)、「マネートーク」(広島市現代美術館、2007-2008年)、「六本木クロッシング2010−芸術は可能か?」(森美術館、2010年)、「Don’t Follow the Wind」(福島の帰還困難区域内某所、2015年-)、「Asian Art Biennale」(国立台湾美術館、2017-2018年)、「Reborn-Art Festival 2021-22 (夏会期)」(宮城県石巻市、女川町) 他、国内外の展覧会キュレーションを多数手がける。 現在、学習院女子大学非常勤講師、川村文化芸術振興財団理事。